高齢者の肩・手・股関節部の骨折
ロコモ3大疾患の一つです。
高齢者がちょっとした事で転倒したりして、肩・手・股関節部の骨折を起こす原因となる骨粗しょう症について解説いたします。
病態と診断
骨粗しょう症は、主に更年期以降の女性に多い骨の密度が減って骨折しやすくなる病気ですが、男性でも高齢になると発症します。
骨粗しょう症になると、上腕骨外科頸骨折(肩)・橈骨(とうこつ)遠位端骨折(手)・脊椎圧迫骨折(背骨)・大腿骨近位端骨折(股)などの骨折が起こりやすくなります。骨粗しょう症の検査は、背骨や股関節のレントゲン検査でもある程度推測はできますが、原則として骨密度を測定します。検査法は、手のXPを用いるMD法・腰椎のCT検査で行うQ-CT法・踵(かかと)の超音波計測法と、DEXA法(二重エネルギーX線吸収測定法)を用いて、橈骨・腰椎・大腿骨頸部・全身などを調べる検査があります。
いずれの方法も長所・短所があり、どの検査が一番優れているか断言する事は困難です。同じ検査法で経過を観察することが要点です。
治療
基本的には、全身を使った日常の運動、カルシウムが豊富な食品(小魚・豆腐や納豆などの大豆製品)摂取が大事ですが、薬物治療も大切です。最近では、週に1回服用するだけの薬が主流となりつつありますが、重症の方には毎日皮下注射をする薬剤も発売されました。さらに、月に1回でよい薬や年に1回でよい薬も開発されつつあります。
歯周病などで、食品をしっかりかむ事ができなくなると、骨粗しょう症になりやすいという報告もありますし、抜歯などの歯科治療を行う際には骨粗しょう症の薬を休薬しなければならない場合もありますので、定期的な歯科受信と口腔内ケアを普段から心掛けておく事は大事なことだと思います。
不幸にして骨折を起こしてしまった場合、手術が必要になる事もあります。転ばぬ先の杖で特に閉経後の女性(高齢の男性も)で、運動不足・瘠せ形・偏食・若い時より5センチ以上背が低くなった・背中が丸くなってきたなどの症状が複数ある方は整形外科で一度骨密度を測りましょう。

左図 この様な現象は老化で起こるものだと思われがちですが、骨粗しょう症も大きな原因の一つ。一般に足腰が弱って始まるといわれている老化現象は、骨の密度が低くなる骨粗しょう症が加わると、まずは背中が曲がり、そして腰、足とだんだん痛みを伴いながら進行していきます。状態が重くなると、自分で動けなくなり寝たきりになるケースもあります。